みなさんこんにちは!ひろです。
今回の記事は、中学受験で出題された問題を通して最先端科学について学ぶことを目的に書いています。
題して、「中学受験過去問で学ぶ最先端科学」!
初回の今回は、理科編の第1弾として「MCH」という技術について学んでいきます。
今日ピックアップする過去問は巣鴨中2023年度(令和5年度)の第Ⅱ期に出題されたこちら↓の問題です。
巣鴨中学校2023年度(令和5年度)第Ⅱ期 – 大問4、問4(2)
問題
[リード文]
大量の水素を輸送する方法として、他の物質に結び付けて輸送し、利用先で再び水素を取り出す研究が進められています。その1つは、トルエンと水素を結び付けてメチルシクロヘキサン(MCH)にし、MCHを再びトルエンと水素に戻すという方法です。トルエンもMCHも室温で液体のため、気体の水素よりも取り扱いが容易になります。
[問題]
5kgの水素を得るために、何kgのMCHを必要としますか。整数で答えなさい。なお、98gのMCHは92gのトルエンと6gの水素に戻すことができます。
さて、自力で解けるか、まずは手を動かしながら考えてみましょう。
解答・解説
「なお、98gのMCHは92gのトルエンと6gの水素に戻すことができます」という記述から、メチルシクロヘキサンがトルエン・水素に分離する反応は以下のように表すことができます。
MCH → トルエン + 水素
98g 92g 6g
つまり、MCHと水素の量的関係は98:6=49:3という比率になります。
よって、5kgの水素を得るために必要なMCHの量を○kgとすると、以下の等式が成り立ちます。
○kg : 5kg = 49 : 3
ここから○kgを計算すると、(内項の積)=(外項の積)により、
○ × 3 = 5 × 49
→○ = 5 × 49 ÷ 3
= 81.666…
≒ 82 (kg)
となります。
「MCHを利用した水素運搬」という最先端科学技術を知る
どのくらいの注目度なのかを日経新聞の記事数で見てみると…
さて、このMCHという技術ですが、現在も研究・実用化が進められており(なんならそれをさらに進化させた技術や代替技術の研究も進んでいる)、日本経済新聞の記事を見ると2023年の1年間で9回も記事となっています。
2023年1月27日
【水素を低温で取り出せる材料 東京大、貴金属触媒不要に】
→「ゲルマニウムの水素化物を鉄系触媒と反応させ、水素を取り出したり蓄えたりする。セ氏50〜80度程度の温度で水素を取り出すことができ、逆の反応である水素貯蔵は1気圧0度でも可能だ。水素の発生・貯蔵に従来用いられてきたメチルシクロヘキサン(MCH)やアンモニアと比べて低温で動作し、安全性も高い。」
2023年1月30日
【エネオス、水素の常温輸送を実現へ 25年度にも大型装置】
→「ENEOSHD傘下のENEOSは30日、水素とトルエンを結合させたメチルシクロヘキサン(MCH)を製造する実証プラントをオーストラリア東部ブリスベンで2月に稼働させると発表した。MCHの製造技術ではENEOSが世界で先行する。」
2023年4月1日
【製油所を「次世代エネ拠点」に ENEOS、SAFや水素製造】
→「ENEOSは水素としての拠点も目指す。川崎製油所(川崎市)などの製油所では、常温で運搬できるように水素をトルエンに反応させてメチルシクロヘキサン(MCH)から水素を取り出す実証をした。」
2023年8月20日
【商船三井、風で水素つくる船 万博出展へ新システム着手】
→「今回の実験ではより効率良く水素を貯蔵し、取り出す方法も検証している。風力によって水中のプロペラを動かして作った電気で水素を分解する。作り出した水素を塗料などに使われるトルエンに反応させてメチルシクロヘキサン(MCH)にする。MCHは常温、常圧で液体となるため貯蔵しやすい。」
2023年9月4日
【海中ソーラー発電始動、横浜市臨海部で相次ぎ脱炭素実験】
→「海外で再生可能エネルギーで製造した「グリーン水素」を効率よく輸送することができる「ダイレクトMCH」と呼ぶENEOSの独自技術の実証も進んでいる。」
2023年10月18日
【水素社会の命運握る調達網 液化に加え常温輸送も】
→「トルエンと水素を結合させてできるメチルシクロヘキサン(MCH)から、効率的に水素を取り出す実証実験が始まろうとしている。核となる技術が電熱線をアルミ素材で包んだワイヤだ。」
2023年11月1日
【ロッテルダム、欧州の水素ハブめざす シェルなどが整備】
→「メチルシクロヘキサン(MCH)など水素を別の化学物質に転換して運びやすくする液体有機水素キャリア(LOHC)も既存施設2カ所の転用を計画する。」
2023年11月15日
【脱炭素社会、産学一体で 京都・大阪・神戸3大学シンポ】
→「水素の輸送には3つの方法があり、それぞれメリットとデメリットがある。マイナス253度という極低温を維持して液化水素の状態で運搬する方法には、タンクの技術的な課題やコストの問題がある。アンモニアや、トルエンと水素を結合させてできるメチルシクロヘキサン(MCH)など大量に運搬しやすい物質に変換して運ぶ手法は、水素を生成する際に電力を使う。毒性をコントロールする必要もある。」
2023年12月7日
【関西、脱炭素・医療の革新をリード 水素社会インフラ着々】
→「海外で生産した水素の運搬では、トルエンと水素を結合させてできるメチルシクロヘキサン(MCH)を用いる手法も選択肢だ。」
2024年も現時点(3/6時点)で1記事となっています。
2024年1月11日
【ENEOS、米国で水素製造計画に出資 年数万トン輸入】
→「ENEOSは水素をトルエンと結合させた「メチルシクロヘキサン(MCH)」として石油タンカーを使って常温で輸送する技術を開発している。」